2020.10.08

暦年贈与を活用した相続税対策と効果の検証

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生前相続対策

相続税対策

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①暦年贈与による相続税対策
いわゆる暦年贈与を毎年行うことで相続税の税負担が減少する効果が得られることは各種報道や金融機関の営業文句等で広く周知されてきました。
相続税の試算や財産対策のご依頼をいただいた際にお客様から詳細にお話を伺うと、とりあえず毎年110万円ずつ贈与している、あるいは贈与税を少しでも納付するために毎年111万円ずつ贈与しているというようなケースが非常に多くあります。
このようなことが起こる一つの要因としては、いくら贈与すればよいのかわからないという将来の相続税負担の不知に由来しています。
この認識と贈与の実行で相続税負担の軽減効果がいくらかでも得られることもあれば、贈与の方法が誤っているためまったく相続税の軽減効果が得られない(そもそも贈与行為自体成立していない)こともあり得ます。
暦年贈与の目的は贈与税の基礎控除110万円を毎年有効活用し、計画的に贈与することで相続時の財産を予め減らすことにありますが、贈与金額が多いために相続税負担は少なくなったとしても贈与税の負担額が大きすぎることも問題になります。

それでは、いくら贈与すると最大限の相続税の節税効果が得られるのか、というと各ご家庭の状況により異なります。
例えば、配偶者の有無や相続人の数、財産金額と財産構成割合等により千差万別です。

今年も10月に入り年末が近づいてきて、今年の贈与を実行するか検討されているご家庭も多くあると思います。
そこで、ある程度の前提状況をおいた上で生前贈与の実行による相続税へ与える影響を検証しましたが、その結果は下記の通りとなりました。

②生前贈与試算の検証結果

前提条件)被相続人が現在有する財産は預貯金8億円、相続人の構成は、配偶者なし/相続人は子3人、贈与の相手は20歳以上の孫、孫は相続又は遺贈により財産を取得しない、被相続人の生活収支はプラスマイナスゼロ
という条件で10年間定額を贈与し続けるパターンを贈与金額を変えて5パターン試算しております。

③パターン別試算の検証結果から考えられること
今回の試算では、わかりやすくするために前提条件をシンプルなものにしておりますが、実務上行っている効果的な生前贈与のご提案も同じように行います。
生前贈与を実行する目的は、相続税を負担した上でご家族に遺す財産が最も大きくなる(=手残りを大きくする)ために行うもののため、今回の試算では生前贈与を行うことによりご家族の手残り金額がどれだけ大きくなるかという視点で検証しております。
ご家族手残り金額は相続発生時の遺産総額と相続発生時までの累計生前贈与金額の合計額(800,000千円)から相続発生時までに納付した累計贈与税額と相続発生時点での相続税総額を合計した金額を控除した残額で計算します。

今回の試算では、生前贈与を行わず相続を迎えた場合、相続税の負担は257,400千円になり、その時のご家族の手残り金額は542,600千円です。(手残り率67.83%)
一方で、贈与税を負担せず毎年1,100千円ずつ孫3人に贈与し続けた場合は、10年後にはご家族の手残り金額は557,450千円となります。(手残り率69.68%)
これは、10年間で33,000千円生前贈与した結果、10年後の相続財産が767,000千円に減少し、相続税を減らすことができた結果です。
贈与税の基礎控除内での贈与のため贈与税の負担はなく、一方で遺産の金額は生前贈与により減少しているためご家族の手残り金額を増やすことができます。

極端なケースとして毎年20,000千円ずつ孫3人に毎年贈与するケースも検証しましたが、10年後の手残り金額は毎年5,100千円ずつ贈与するよりも多い結果となりました。
また、20,000千円贈与するケースと10,000千円ずつ贈与するケースを比較すると、4年後の相続開始までは20,000千円贈与するケースの方が手残り金額は多くなります。

先述の通り、生前贈与を行う目的は、最終的にご家族に残る手残り金額を大きくすることです。
今回はわかりやすくするために相続税と贈与税という観点でのみ手残り金額の試算を行いましたが、実際の相続税対策の現場では、相続税対策を行う結果、所得税・法人税・贈与税・相続税の合計負担税額(場合によっては、登録免許税と不動産取得税も考慮します)が最も少なくなる(=ご家族の手残り金額の最大化)ケースを検討して相続税対策を行うことが重要です。

今回の試算の結果でわかるように、長い期間をかけて行う生前贈与は相続税対策を行う上で非常に重要な施策の一つですが、それ故に実行方法で失敗すると長期にわたって行った対策がまったくの無駄になることもありえますので、実行の際は慎重に行う必要があります。

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