2020.10.16

相続税対策で贈与を行う場合の注意点

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生前相続対策

相続税対策

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①名義預金に関する注意点
贈与は「あげます」「もらいます」の関係が存在して初めて成立する契約になります。
従って、祖父母が孫名義の通帳を作成し(今は難しいかもしれませんが)、又は孫名義の通帳を借り受け、孫の知らない間にその預金口座に毎年祖父母の預貯金を移動させる行為は贈与にはなりません。
贈与関係が成立していない以上は、この預金口座は孫のものではなく、孫の名義を借りた名義預金と言われ、祖父母の相続財産として扱われます。贈与税の申告期限は原則6年ですが、名義財産の形成に時効はありませんので、長期間かけて名義預金口座に資金を移転したとしても、その行為は何らの相続税対策にもなりません。
贈与したつもりが名義財産と認定されることを回避するには、贈与関係を適法に成立させておく必要があります。具体的には、贈与契約書を贈与の都度作成し、贈与者の記名押印、受贈者の記名押印(受贈者が未成年の場合は親権者が記名押印)を行った上で、多少手数料を要しても公証人役場で確定日付まで取得すると万全です。
今回は孫名義の名義預金を例示しましたが、預金口座の名義が配偶者であっても同様に取り扱われます。
例えば、生涯専業主婦で正社員としてフルタイム勤務の実績がなく、親からの相続財産もそれほどもらっていない妻の預金口座に多額の預貯金の残高が残っていた場合(いわゆる、へそくり)、どのように取り扱われるのでしょうか。
この場合、夫から贈与の形で預貯金をもらっているという立証がなければ名義預金として夫の相続財産と認定される可能性があります。
というのも、この名義預金口座は夫婦どちらかの固有財産と明確に断定できる要素がなく、形成された要因が夫の稼ぎを原資として蓄積されたものである以上は、夫の財産であると認定されるためです。
相続税の税務調査では、被相続人名義の預金口座の履歴を過去数年にわたって取り寄せ多額の出金事実を確認した上で名義預金の有無を探っています。
その過程で相続人や孫の口座の名寄せも可能な限り行い、それらの口座の履歴も取得し、口座開設時の銀行届出印と筆跡の確認まで行っています。
その上で、税務調査の臨場現場で印鑑や通帳の管理状況、契約書の有無等の事実関係から名義預金の相続財産計上漏れを指摘します。
相続税の税務調査で申告漏れになっている財産は毎年現預金がトップですし、安易な口座作成や口座管理は思わぬトラブルを招きますので、財産を生前に贈与で移す場合は必ず適法な方法での移転が必要です。

②連年贈与に対する考え方
相続税対策として毎年同額の贈与をされる方が多くおられます。
これらの方のご相談をお聞きすると、毎年同額の贈与を行っている以上、贈与金額の合計額(いわゆる一括贈与)に対して贈与税が課されるのではないか?と心配される方が多くおられます。
この贈与形態ですが、「毎年行っている贈与は定期金の贈与契約に該当するため遡って修正申告をして下さい」と税務調査で修正申告を求められるケースは極めて稀だと思われます。
定期金として課税を行うには、それを立証するために定期金の贈与契約が存在しなければならないのですが、通常の家庭でそのような契約を締結している例はまずないと思われるためです。
また、贈与により資金を移転する場合、当事者間で「あげます」「もらいます」の合意がなされてから毎回贈与が実行されるのが通常であり、例えば1,000万円の定期金の贈与契約を予め締結しておき、毎年その履行を分割して行うというケースは家庭内ではほぼありえないと思います。

③贈与の対象者
相続税対策として生前贈与を行う目的は、相続税よりも少ない税負担で生前に子や孫に財産を贈与しておき、自身に相続が発生した時の相続財産を少しでも減らしておくことにあります。
その贈与の相手ですが、相手次第で相続税対策が無意味になるケースもありますが、それは以下のパターンが考えられます。
(1)相続人に対する贈与
生前贈与が相続税対策として無意味になるケースは、相続開始前3年以内の贈与財産が相続財産に加算され、結局は相続税課税の対象になることです。
これは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合、その財産の金額が贈与税の基礎控除内かどうか問わず、すべて相続税の課税価格に加算するという規定で生前贈与加算とも呼ばれます(住宅取得資金の贈与税非課税の規定等により相続税の課税価格に加算されない贈与財産も存在します)。この規定に該当すると相続財産を減らすという目的を果たせないこととなります。
相続人は、通常は相続により財産を取得する場合が多いため、贈与の相手が相続人の場合、相続開始前3年以内の贈与財産は要注意です。
(2)相続人以外に対する贈与でも注意が必要なケース
生前贈与加算の規定は相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得している場合に適用されますが、相続税法の規定により相続又は遺贈により財産を取得したとみなされた場合、その者に対する相続開始前3年以内の贈与財産も相続税の課税価格に加算されますので、遺産分割協議や遺贈により財産を取得していなくても注意が必要です。
1.生命保険金を取得した場合
相続又は遺贈により取得したとみなす規定は、いわゆるみなし財産と呼ばれ、一番有名なものが被相続人が保険料を負担し、かつ被保険者となっている生命保険金です。この契約では、被相続人死亡時に保険金受取人に死亡保険金が支給されますが、この生命保険金を取得した者は、その者が相続人であるときは相続により取得したものと、相続人以外であるときは遺贈により取得したものとみなされます。相続又は遺贈により財産を取得しておらず、この契約形態の死亡保険金を取得しており、かつ、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得している場合は要注意です。このみなし財産は既に加入している生命保険証券を確認すればすぐにわかりますので、相続税対策を行う場合は、生命保険金の非課税枠を活用できているのか確認するためにも生命保険証券は今一度確認されることをお勧めします。
2.生命保険契約に関する権利を取得したとみなされる場合
これは、生命保険の契約者=被相続人以外(孫等)、被保険者=被相続人以外(相続開始時において保険事故未発生)、保険料負担者=被相続人という契約形態です。生命保険契約は契約者が保険料を負担するのが通常ですが、生命保険に加入する目的が運用目的等のため、被相続人が保険料を負担するこの形態の保険に加入しているパターンは要注意です。
この場合、被相続人死亡時までに被保険者が負担した保険料に見合う解約返戻金を契約者が取得したものとみなされます。この規定は条文では「みなす」規定になっていますので、一切の反証が認められません。
例えば、生命保険契約の契約者が被相続人の孫で、被相続人が保険料を負担しており、生前贈与加算の規定に当て嵌まらないと思い込み、この孫に財産を生前贈与している場合は、贈与が相続開始前3年以内であれば、その贈与財産は生前贈与加算の規定で相続税の課税価格に加算されてしまいます。
相当前に被相続人がこの契約に加入して保険料を負担している場合、契約者はこの事実を知らないケースも考えられますので、再度保険契約の加入関係は保険料負担者も含め再確認することをお勧めします。
ちなみに、このように保険事故未発生の場合で、生命保険の契約者=被相続人、被保険者=被相続人以外、保険料負担者=被相続人の形態では、生命保険契約の解約返戻金は本来の被相続人の財産として取り扱われ、遺産分割協議を経て誰がこの契約を引き継ぐか協議して決定します。

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