2020.08.25

同族会社に対して有する貸付金等債権等の評価

category

財産の評価

一般動産

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非上場株式の株価評価を行うときに、経営者が評価会社に貸付金や未収金を有している(評価会社の貸借対照表負債の部に役員借入金や役員未払金として計上されている)ケースをよく見ます。
発生要因としては、過去に資金繰りに窮し、代表者が個人の資金を貸し付けた、また、未収金に関しては過去の資金繰りの都合上未払役員報酬がそのまま残っているケース等が考えられます。
この場合、その貸付金や未収金はどのように評価するのでしょうか。
貸付金債権は財産評価基本通達204に貸付金債権の評価として規定されています。以下、引用させていただきます。

財産評価基本通達204(貸付金債権の評価)
貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は、次に掲げる元本の価額と利息の価額との合計額によって評価する。

(1)貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額
(2)貸付金債権等に係る利息(208≪未収法定果実の評価≫に定める貸付金等の利子を除く。)の価額は、課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額

引用:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/08.htm#a-204

規定上、貸付金債権等の評価額は返済されるべき金額とされていますが、債務者である同族会社が債務超過で返済が困難な場合は、何らかの評価減が認められるのかと思いがちですが、単なる債務超過では何らの評価減も認められず、財産評価基本通達204に従い返済されるべき金額(額面)と利息の合計額で評価されます。
この部分は財産評価基本通達205で規定されていますので、以下、引用させていただきます。

財産評価基本通達205(貸付金債権等の元本価額の範囲)

前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)

イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき

ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき

ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき

ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき

ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき

ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額

イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額

ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

引用:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/08.htm#a-205

これら例示からわかるように、法的手続きにより再生手続きが開始している場合や業績不振により営業活動を当分の間行っていない場合等は元本価額は評価されませんが、「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」もその回収困難な部分は元本価額に算入されません。では、「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」とはどのような状態をさすのでしょうか。

財産評価基本通達ではこの部分の具体的例示は触れられていませんが、東京地裁平成30年3月27日の判決(納税者敗訴、控訴審でも納税者敗訴)によれば、この部分が財産評価基本通達205(1)ないし(3)の事由と並列的に規定されていると判断した上で債務者が経済的に破綻していることが客観的に明白であり、そのため、債権の回収の見込みがないか、又は著しく困難であると確実に認められるときをいうものと解すべきである。と判示しました。
この部分は控訴審でも支持されています。

これらのことから、同族会社に対し債権を有しており、その会社が債務超過でも通常の営業活動を行っている場合は、その債権の額面評価は免れません。
このような債権を有したまま相続が開始すると、対策の行いようがありませんので、相続開始前の早い段階から債務免除益課税や債務免除に伴うみなし贈与課税に留意しながら債権放棄しておく、金融機関からの借り入れによりその債権を弁済する、又は債務免除益課税が生じなければ法人を清算しておくことも相続税対策の選択肢の一つとして考えられます。

数年前に相続税の申告をさせていただいた際にも同族会社に対し債権を有したまま相続が開始した事例に遭遇しましたが、その会社は事業を廃止して数年経過している上、債務超過であったため、疎明資料を添付した上で債権の評価をゼロとして申告しましたが、特に税務調査等に発展することはありませんでした。

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