2020.08.28

配偶者居住権の創設(概要)

category

相続税

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①配偶者居住権創設の経緯

平成30年7月6日民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が参議院で可決成立し、7月13日に公布されました。その改正案のうちの新設部分の一部が配偶者の居住権を保護するための配偶者居住権の創設で、令和2年4月1日に施行されました。
改正前は、被相続人の相続に関する遺産分割協議で、被相続人の配偶者が居住の用に供している被相続人の所有家屋の所有権を相続すると、その他の財産を相続できる割合が少なくなり、老後の生活の安定が脅かされるケースが見られました。
そのため、配偶者の居住及び老後の生活の安定のために、配偶者の生存中は配偶者が居住の用に供している被相続人の所有家屋に無償で居住できる権利(配偶者居住権)が創設されました。

②配偶者居住権を取得した場合の配偶者の相続分

配偶者居住権の創設により、配偶者以外の相続人が配偶者の居住建物の所有権を相続したとしても、配偶者が配偶者居住権を取得することで、配偶者の住居が確保されることとなりました。
また、居住建物の権利は配偶者居住権と配偶者居住権という負担のついた所有権に分けられることになり、配偶者居住権を取得した配偶者が相続できるその他の財産も大きくなりました。具体的には以下のようなケースが考えられます。
<前提条件>
(相続人)配偶者、長男
(相続財産)居住用家屋30,000千円、現預金40,000千円
この場合に配偶者が居住用家屋を相続した場合、改正前だと金融資産は5,000千円までしか相続できません((30,000千円+40,000千円)/2-30,000千円=5,000千円)が、配偶者居住権の評価が20,000千円で、配偶者が配偶者居住権を取得した場合は、15,000千円まで((30,000千円+40,000千円)/2-20,000千円=15,000千円)現預金を相続でき、尚且つ終身でその家屋に無償で居住し続けることができます。
負担付所有権を相続した相続人も、被相続人の配偶者が死亡した場合は配偶者居住権が消滅するだけであり、何らの追加の権利も取得せずに所有権が完全になるので、配偶者が死亡した後の権利の安定が図れます。

③配偶者居住権の存続期間中の配偶者の注意義務

配偶者居住権を取得した配偶者は、賃借人と同様の注意・管理を行う必要があります。

第三者に賃貸する場合も建物の所有者の同意が必要です。建物の通常の修繕は配偶者の費用負担で行いますが、増改築は建物所有者の同意が必要です。建物所有者の同意なく増改築を行った場合は、建物所有者は配偶者に是正勧告を行い、それでも是正に応じない場合は配偶者居住権を消滅させることができます。
固定資産税は所有者に自治体が課税通知を行い、所有者が納税義務を負いますが、通常の維持管理に要する負担は配偶者が負担する必要がありますので、配偶者に請求することも可能です。

④配偶者居住権の消滅

配偶者居住権の存続期間は配偶者の終身(遺産分割協議等で別の期間を定めることも可能)とされていますが、その間に配偶者が善管注意義務を怠って管理したり、建物所有者の同意を得ずに増改築を行った場合は所有者は是正勧告を行うことができ、配偶者が是正に応じなかった場合は配偶者居住権を消滅させることができます。
また、配偶者居住権の設定期間満了前に配偶者が死亡した場合も配偶者居住権は消滅します。配偶者居住権の合意解除、放棄も可能ですが、課税関係が生じますので、注意が必要です。

配偶者居住権の設定により相続税の節税を図ることもできますが、配偶者居住権に関する税金面は稿を改めて解説いたします。

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