2020.08.30

配偶者居住権の評価方法

category

相続税

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①配偶者居住権の評価に関する基本的考え方
相続税や贈与税の計算の基礎となる財産の評価額は、財産を取得した時期の時価により計算します。(相続税法第23条)
その時価も画一的に評価できるように財産評価基本通達で評価方法が定められています。
配偶者居住権の評価に関しても時価で評価する必要がありますが、配偶者居住権に関しては被相続人の配偶者のみに認められる権利であること、譲渡が禁止されていること等により不特定多数の間で取引される時価の算定が困難であると考えられますので、相続税法本法で法定評価方法が採用されました。配偶者居住権は権利が存続する期間中のみ有効であるため、期間満了により消滅します。
従って、期間終了時の建物の価額を現在価値に割引計算することで配偶者居住権付きの建物の現在価値を算定し、配偶者居住権が設定されていないものとした家屋の価額からその分を控除することで評価します。
配偶者居住権付きの敷地の評価も同様に評価します。
②具体的評価方法
配偶者居住権は、配偶者居住権の存続期間満了時の建物の価額を現在価値に割り戻し、その価額を評価時期における配偶者居住権が設定されていないとした場合の建物の評価額から控除して算定しますが、その計算は以下のプロセスをたどって計算します。
(1)配偶者居住権の存続期間満了時の建物の価額を算定(建物の耐用年数を法定耐用年数の1.5倍として減価した後の未償却残高を採用)
(2)(1)を法定利率(現在は3%)による複利計算で現在価値に割り戻す
(3)評価時期の建物の価額-(2)=配偶者居住権の評価額
算式に置き直すと以下の算式になります。
居住用建物の相続税評価額-居住用建物の相続税評価額×(耐用年数-経過年数-存続年数)/(耐用年数-経過年数)×存続年数に応じた法定利率による複利現価率
計算式では分かりにくいですので、具体的な数値で検証します。前提条件は以下の通りとします。
1.居住用建物の相続開始時点の相続税評価額 20,000千円
2.居住用建物の敷地の相続開始時点の相続税評価額 60,000千円
3.居住用建物の構造 木造(法定耐用年数22年)
4.居住用建物の建築年月日 2010年10月1日
5.相続開始年月日 2020年9月1日
6.賃貸供用部分 無
7.共有者 無
8.遺産分割協議で設定した配偶者居住権の存続年数 30年
9.配偶者の性別、年齢 72歳女性

以上の条件での配偶者居住権は以下の計算で評価されます。なお、耐用年数、経過年数、存続年数、平均余命の端数は6月以上は切り上げ、6月未満は切り捨てになります。
1.居住用建物の相続税評価額 20,000千円
2.耐用年数 22年×1.5=33年
3.経過年数 2010年10月1日~2020年9月1日→10年
4.存続年数 72歳女性の平均余命 18年<配偶者居住権の設定年数 30年 相続税計算上は生命表記載の平均余命が上限年数なので、この場合は18年になります。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/22th/dl/22th_04.pdf
5.存続年数に応じた年利3%の複利現価率 0.587

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/08/09_2.htm

6.家屋の配偶者居住権評価額
20,000千円-20,000千円×(33年-10年-18年)/(33年-10年)×0.587=17,447,826円

 

配偶者居住権が設定される土地に係る配偶者居住権の評価方法も家屋と同様の計算方法です。土地は家屋と異なり耐用年数や経過年数という考え方がありませんので、よりシンプルに評価できます。
1.配偶者居住権を設定する土地の評価額 60,000千円
2.存続年数 18年
3.存続年数に応じた年利3%の複利現価率 0.587
4.土地に係る配偶者居住権評価額
60,000千円-60,000千円×0.587=24,780千円

③建物の残存年数(=耐用年数-経過年数)が配偶者居住権の存続年数を下回る場合
建物の残存年数が配偶者居住権存続年数を下回る場合は、(耐用年数-経過年数-存続年数)/(耐用年数-経過年数)の計算結果がマイナスになります。
算式中、分数の項の分母又は分子が零以下となる場合には、分数の項を零とすることとされています(相続税法第 23条の2①二)。

この結果、建物の評価額と建物に係る配偶者居住権の評価額は一致します。
残存年数が存続年数を下回るということは、存続年数経過時点で建物の価値はゼロになっている、又は残存年数のすべての期間を配偶者が使用することになると言えるため、配偶者居住権の価額は建物の評価額と一致することになります。
土地に関しては残存年数という考え方がありませんので、土地の評価額と土地に係る配偶者居住権の評価額が一致することはありません。

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