2020.10.20
債務の承継と相続税法上の債務控除
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相続税
相続税の計算
相続税の課税価格は、相続又は遺贈により取得した財産の金額に相続時精算課税制度適用財産を課税価格に算入し、それらの金額から債務・葬式費用を控除し、生前贈与加算対象財産を加算して算定します。
その債務ですが、納税義務者が居住無制限納税義務者又は非居住無制限納税義務者である場合、相続税法第13条第一項第一号において「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)のうち、その者の負担に属する部分の金額」が控除できると規定されています。
①その者の負担に属する部分の金額
そこで、相続財産から控除できる「その者の負担に属する部分の金額」ですが、実務上は、実質課税の観点から共同相続人と包括受遺者の間で協議により決定した金額又は遺言書により指定された金額が控除されます。
ただし、この決定は相続人間でのみ有効であり、債権者に対抗することはできません。
この決定を債権者に対しても有効とすると、特定の相続人にのみ債務を承継させ、その債務承継者が弁済不能に陥った際に債権者を保護することが困難になってしまうためです。
債権者が相続人間で決定した債務の負担を承認して初めて債務を承継しない相続人が実質的に免責されることとなります。
②債務承継者が返済不能になった場合
相続人間で決定した債務承継者が返済不能になり、金融機関との間で債務承継の承認が得られていない場合は、他の共同相続人に対し法定相続分に応じた債務弁済の請求がなされます。
他の共同相続人が肩代わり負担した分に関しては、当初の債務承継者に対して弁済請求を行うこととなります。