2020.10.26

父の遺産分割協議前に母が他界した場合の相続税計算の注意点

category

相続税

相続税の計算

写真

父が他界した後に、父の遺産分割協議成立前に母も間を置かずに他界した時の相続税計算のポイントは2点あります。
一つは、配偶者税額軽減の適用の有無と、もう一つは2回の相続を通じて相続税負担を最も少なくする遺産分割協議です。
①配偶者税額軽減の適用の有無
配偶者の税額軽減は、
相続税の申告期限内に遺産分割協議が成立している場合に
配偶者が相続する遺産が1億6千万円又は配偶者の法定相続分
までは配偶者に相続税が課されない制度です。
相続税の申告期限内に遺産分割協議が成立しているという条件ですが、両親が相次いで他界したために最初の相続(父他界に係るいわゆる一次相続)に関する遺産分割協議が成立する前に母も他界した場合の一次相続に係る配偶者税額軽減の適用関係はどのようになるのでしょうか。
この場合、一次相続の遺産分割協議が未分割状態なので、適用できないように考えられるかもしれませんが、実際は父の相続人と母の相続人が父の遺産分割協議を行い、母の取得財産を確定させることで一次相続で配偶者税額軽減の適用が受けられます。(相続税基本通達19の2-5)
父の遺産分割協議書の記載ですが、母の相続人が相続人兼母の相続人●●として遺産分割協議を行い、母が取得する財産を確定させます。
②2回の相続を通じて相続税負担を最も少なくする遺産分割協議の進め方
父の他界と母の他界が相次いで生じた場合の2回の相続を通じた相続税負担ですが、父固有の遺産総額と母固有の遺産総額が相続税申告書作成の過程で判明しますので、2回の合計相続税額が最も少なくなる遺産分割協議を行うことが可能です。
一次相続と二次相続を通算した合計相続税額が少なくなるポイントは
・一次相続の配偶者税額軽減
・母が一次相続で取得する遺産以外に有する母固有の財産
等を考慮しながら遺産分割協議を行うことです。
具体的な計算例は以下のようになります。便宜上、小規模宅地の特例や相次相続控除は考慮せずに計算しております。

(前提条件)
一次相続の相続人:母、長男、次男
二次相続の相続人:長男、次男
の場合で、2パターン計算してみます。
(1)父の固有財産5億円、母の固有財産なしの場合
1.母が一次相続で100%相続したとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税6555万円、二次相続の相続税1億2298万円 一次相続と二次相続の合計納付税額1億8853万円
2.母が一次相続でまったく相続しないものとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税1億3110万円、二次相続の相続税0円 一次相続と二次相続の合計納付税額1億3110万円
3.母が一次相続で50%相続したとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税6555万円、二次相続の相続税4920万円 一次相続と二次相続の合計納付税額1億1475万円
4.母が一次相続で30%相続したとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税9177万円、二次相続の相続税1840万円 一次相続と二次相続の合計納付税額1億1017万円
(2)父の固有財産2億5000万円、母の固有財産2億5000万円の場合
1.母が一次相続で100%相続したとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税1429万円、二次相続の相続税1億4567万円 一次相続と二次相続の合計納付税額1億5996万円
2.母が一次相続でまったく相続しないものとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税3970万円、二次相続の相続税4920万円 一次相続と二次相続の合計納付税額8890万円
3.母が一次相続で50%相続したとして遺産分割協議を行う場合
一次相続の相続税1985万円、二次相続の相続税9920万円 一次相続と二次相続の合計納付税額1億1905万円

上記の例で確認したように、一次相続の遺産分割協議が成立する前に二次相続が発生した場合、一次相続と二次相続の合計相続税額を正確にシミュレーションすることで相続税負担を考慮した遺産分割を行うことが可能です。
配偶者が一次相続発生時点で既に固有の財産を所有していて、その額がある程度大きなものである場合、一次相続で何も相続しなくても既に高い相続税率が発生していますので、そのような時は(2)2のように一次相続で何も相続しない場合が相続税負担が一番少なくなることもあります。
今回のケースでは、5億円の遺産を次世代に承継するのに要するコスト差が7000万円以上も発生してしまいますので、難解な相続税申告は相続を専門とする税理士に依頼されることをお勧めします。

閉じる
無料相談・見積り依頼 MAIL FORM無料相談
トライアングル

無料相談のお申込み
その他相談・見積り依頼等
随時お受けしております

相続を始めとした財産の承継に関する
お悩みごとやご相談、
どんな小さなことでもかまいません。
メールフォームよりお気軽にご連絡ください。