2020.11.02

相続を放棄した者が死亡保険金を受け取った場合の課税関係

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相続税

相続税の計算

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相続の放棄とは、被相続人の財産につき相続する権利を放棄することをいいます。
財産のみならず、被相続人の債務についても相続することがなくなりますので、被相続人の債務が多額で、債務が資産を上回る債務超過のときに選択するケースがあります。
その場合でも、被相続人の本来の財産とはいえない死亡保険金は受け取ることができますので、その場合の相続税計算上の留意点を説明いたします。
①相続放棄と相続人
相続の放棄があった場合、民法939条の規定により、相続を放棄した者は初めから相続人とならなかったものとみなされますので、その者の直系卑属は代襲相続人となれません。
具体的には以下の扱いとなります。
(具体例①)
相続人は、
被相続人の配偶者
被相続人の子1(放棄)
被相続人の子2
この場合、子1に直系卑属がいたとしても、その直系卑属は代襲相続人になれませんので、相続人は被相続人の配偶者と被相続人の子2の二人で、それぞれの法定相続分は1/2ずつとなります。
(具体例②)
相続人は、
被相続人の配偶者
被相続人の子(放棄)
この場合、子が相続放棄したことにより、子は最初から相続人でなくなりますので、子に直系卑属がいたとしても、その直系卑属は代襲相続権を有しません。その結果、子がいない相続のパターンになるため第二順位相続人である被相続人の直系尊属が相続人となり、その場合の法定相続分は配偶者が2/3、直系尊属が1/3となります。

②死亡保険金を受け取った場合の相続税の非課税制度
相続を放棄した場合でも、死亡保険金は民法上の本来の財産とはいえないため被相続人の死亡を原因とする死亡保険金は受け取ることができます。
相続税の計算では、死亡保険金の非課税規定がありますが、相続の放棄があった場合は以下の注意点があります。
(1)相続税の非課税規定の適用関係
死亡保険金の非課税の規定は、相続税法第12条第1項第5号により「相続人の取得した相続税法第3条第1項第1号に掲げる保険金については、500万円×法定相続人の数に相当する金額は相続税の課税価格に算入しない」とされていますので、非課税規定が受けられるのは相続人のみであり、相続の放棄をした者は相続税の非課税規定の規定を受けることはできません。
(2)相続税の非課税規定の上限額
死亡保険金を受け取った者の中に相続人がいた場合、その者は死亡保険金の非課税の適用が受けられますが、非課税限度額は500万円×法定相続人の数とされています。
この場合の法定相続人の数は、相続の放棄があった場合には放棄がなかったものとした場合の相続人の数となります。

③遺産に係る基礎控除
遺産に係る基礎控除は3000万円+法定相続人の数×600万円ですが、この場合の法定相続人の数は、上記の②(2)と同様、相続の放棄があった場合には放棄がなかったものとした場合の相続人の数となります。
④配偶者の税額軽減
配偶者が相続の放棄をした場合の配偶者の税額軽減は、相続税基本通達19の2-3で配偶者に対する相続税額の軽減の規定は、配偶者が相続を放棄した場合であっても当該配偶者が遺贈により取得した財産があるときは、適用があるとされており、また、相続人以外が受け取った死亡保険金は相続税法第3条により遺贈により取得したものとみなされますので、配偶者が相続の放棄をした場合でも配偶者の税額軽減の適用は受けられます。
なお、相続税額の加算については、適用対象者が「1親等の血族及び配偶者以外」とされているため相続の放棄をした配偶者には適用されません。

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