2020.11.13

財産分与に関する税務上の取り扱い

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譲渡所得

譲渡所得の計算

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①財産分与の性質

財産分与とは、婚姻期間中に形成された財産を離婚に伴い清算する制度ですが、その性質は以下の3つの性質を帯びています。

(1)婚姻期間中に形成された共有財産の清算

夫婦が婚姻後に築き上げた財産は、名義上は夫又は妻のものであっても、その形成過程には夫婦お互いの協力があったと考えられるため、婚姻後いままで築き上げた共有財産を離婚に伴い清算するという考え方になります。

(2)慰謝料的性格での財産分与

夫婦の一方に責任があることが離婚原因となり、離婚原因を作った配偶者が片方の配偶者に精神的苦痛の賠償をする意味での財産分与になります。

(3)扶養的意味での財産分与

夫婦一方が離婚後の相手の生活扶助のために行われる財産分与です。

②税務上の課税関係

財産分与の性質は上記の通りですが、税務上は財産分与の性質により課税の差は特段設けられておらず、何を財産分与したのかで課税関係が変わります。

(1)現金を授受した場合

1.受け取った側

財産分与として取得すべき金額が適正であれば所得税も贈与税も課税されません。ただし、取得した財産の額が財産分与として受け取るべき適正金額を超えている場合は、その超えている部分に対して贈与税が課されます。

慰謝料的性質として財産分与を受けた場合は、心身に加えられた損害に起因して取得するものとして非課税扱いが明確である一方、共有財産の清算として取得したものに関しては非課税の明文はありませんが、共有財産の清算という意味合いから経済的利益が生じたものではないと考えられるので、課税されることはありません。

2.交付した側

共有の財産を清算するために現金を交付しただけであり、課税されることはありません。

(2)不動産を授受した場合

1.受け取った側

(1)1と同様に財産分与として適正な額であれば、所得税も贈与税も課税されることはありません。

2.交付した側

財産分与として不動産を交付した場合、慰謝料的性質として交付した場合は加害者の有する損害賠償債務の消滅と引き換えに不動産を有償譲渡したと考えられるため、譲渡所得が生じます。

共有財産の清算として財産分与した場合も、離婚により生じた財産分与義務に基づく債務の消滅対価として不動産を分与したと考えられるため、譲渡所得が生じます。

これらの場合、譲渡所得の計算上、収入金額とされる金額は時価になります。

第三者に譲渡して対価を得る取引ではないため、時価の算定では、例えば路線価や公示価格、固定資産税評価額、家屋であれば償却後簿価等を参酌して譲渡所得を計算しても、計算が合理的であれば問題ないと思われます。

交付した不動産がもともと居住していた不動産の場合は、譲渡の相手が元配偶者であり、分与時点では特別な関係のある者への譲渡には該当しませんので、居住用不動産を譲渡した場合の各種特例の適用対象となります。

なお、財産分与にあたり、不動産の所有権移転と同時に債務引受が行われた場合も、譲渡所得の収入金額は当該不動産の時価になり、債務の引き受け金額まで譲渡所得の収入金額になることはありません。

(3)財産分与として取得した不動産を譲渡した場合の譲渡所得の計算

不動産を譲渡した場合の譲渡所得の金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を控除して計算します。

財産分与として取得した不動産を譲渡した場合の不動産の取得費ですが、離婚協議書の記載金額や財産分与した相手方の譲渡所得計算上の収入金額で算定するのが一番合理的と考えられますが、これらが難しければ、財産分与として不動産を取得した時の路線価や固定資産税評価額、公示価格等を参酌して計算しても問題ないと思われます。

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