2020.11.11

自社株式に相続が発生した場合の株式の取り扱い

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生前相続対策

争族対策

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①遺産分割協議が成立するまでの状態

相続が開始すると、被相続人が所有していた財産は、遺言が存在していれば遺言に従い承継され、遺言が存在していなければ遺産分割協議を経て相続人に承継されます。

遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がありますが、遺産分割協議が成立するまでは自社株式は準共有状態となります。

②株式の準共有状態

株式の準共有状態とは、各相続人が法定相続分に応じて株式を所有するものではなく、被相続人が所有していた株式の一株ずつすべてを相続人が共同で所有している状況を指します。

準共有状態での議決権行使に関しては、相続人の中から株主としての権利行使者を一人定め、会社に通知してから権利行使が可能になります。

株式の準共有状態とは以上のような状況ですので、次に掲げる例のようなリスクを含みます。

(1)相続人関係

配偶者、長男(後継者、代表取締役)、次男

(2)相続開始直前の株式保有割合

被相続人55%、長男45%

 

このような状態で被相続人が遺言を遺さずに他界した場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

その遺産分割協議が成立するまでの議決権は、被相続人が保有していた55%の議決権は配偶者に1/2、長男に1/4、次男に1/4配分された結果、

配偶者55%*1/2=27.5%、長男45%+55%*1/4=58.75%、次男55%*1/4=13.75%となるのではなく、三人の多数決により55%の議決権を行使します。

そのため、配偶者と次男が結束して議決権を行使することとなった場合、最悪長男の取締役解任まであり得ます。

こうなる事態に備え、自社株式の承継には遺言の活用が必須と言えますが、遺言による自社株式の承継を検討する場合、以下に留意しながら承継策を検討する必要があります。

③遺言による自社株式の承継

遺言による自社株式の承継には後継者である相続人に「相続させる遺言」と「遺贈する遺言」の2形式があります。

(1)相続させる遺言

相続させる遺言は、相続人に遺産を承継させる場合によく見られる遺言です。

相続させる遺言は遺産分割方法の指定とされており、遺産分割による承継は会社法の規定により相続その他の一般承継とされているため、定款の規定により会社から相続人に対する自社株式の売渡請求が可能になります。

例えば、定款の規定により相続その他の一般承継により自社株式を相続した相続人に対する株式の売渡請求を行うことが可能な会社で、被相続人が60%の議決権を保有しており、親族以外の取締役が40%の議決権を保有した状態で被相続人に相続が発生した場合で、

被相続人が相続人である後継者に自社株式を相続させる旨の遺言を遺していた場合、親族以外の取締役である株主は、臨時株主総会を開催し、会社決議により相続人である後継者に株式の売渡請求を行うことが可能になります。

この場合、売渡請求を受けた相続人である後継者は議決権を行使することができず、また、売渡請求を拒むこともできませんので、親族以外の取締役に会社を乗っ取られる恐れがあります。

なお、相続による株式の承継は、非公開会社であっても会社の承認なく承継を行うことが可能です。

(2)遺贈する遺言

(1)の相続させる遺言では、株式の売渡請求の対象になる可能性がありますので、そのような時は遺贈する遺言を遺すことが選択肢として考えられます。

遺贈による承継は相続による承継とは異なり、特定承継に該当し、株式の売渡請求の対象とはならないためです。

ただし、遺贈による承継は会社の譲渡承認が必要ですので、その点は注意が必要です。

(1)と(2)の承継方法はそれぞれリスクを含めた特徴がありますので、遺言書の作成と同時進行で定款の見直しや種類株式の導入等により自社株式の承継対策を行う必要があります。

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