2020.09.30

住宅取得資金に係る贈与税の非課税制度に関する留意点

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贈与税

贈与税の各種特例

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住宅取得資金の贈与税非課税制度は多額の資金を一度に下の代に移転できるため、相続税対策として非常に有用ですが、適用要件の見落としをしてしまうと多額の贈与税負担が生じる可能性がありますので、留意点を列挙します。
①贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その資金の全額を家屋の新築若しくは取得又は増改築すること。
住宅取得資金の贈与税非課税制度の適用を受けるには、贈与により住宅取得資金を取得した年の翌年3月15日までにその資金を自己の居住用家屋の新築若しくは取得又は増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等を行い、同日までにその家屋に居住する又は同日後遅滞なくその家屋を自己の居住の用に供することが確実である必要があります。
ここで、「新築」と「取得」は明確に異なり、3月15日までに整えておく状況が異なるので注意が必要です。
「新築」とは、贈与を受けた年の翌年3月15日において、屋根・骨組みを有し、土地に定着している建造物と認識されるもの以後の建物をいいます。従って、工務店やハウスメーカー等と建築請負契約を締結し建築を発注する場合が典型パターンと言えます。
一方で、「取得」とは、建売住宅や分譲マンションの購入が典型パターンで、建物の引き渡しをいいますので、建売住宅や分譲マンションを販売する業者から取得する場合には住宅取得資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用家屋の引き渡しを受けておく必要があります。
②贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住開始できない場合
住宅取得資金の贈与税非課税制度の適用を受けるには、住宅取得資金の贈与を受けた年の翌年3月15日までにその資金で購入した家屋に居住する又は同日後遅滞なく居住する必要があります。
ここで、3月15日までに居住できない場合の「遅滞なく居住する」とは贈与を受けた年の翌年12月31日までの居住をいいますので、どれだけ遅くとも贈与を受けた年の翌年12月31日までに居住開始しておく必要があります。もし、その日までに居住開始ができなければ、贈与税の修正申告書の提出が必要となり、多額の贈与税が発生します。この場合、既に贈与資金は住宅購入資金のために費消しておりますので、贈与額次第では贈与税の納税負担は相当大きなものとなります。
なお、贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住を開始することができなければ、「住宅用家屋の新築又は取得後直ちに居住の用に供することのできない事情及び居住の用に供する予定時期を記載した書類」と「住宅用家屋を遅滞なく居住の用に供することを約する書類」を贈与税の期限内申告書に添付して申告する必要があります。

③贈与税の期限内申告書を提出すること
住宅取得資金の贈与税非課税制度の適用を受けるためには、贈与税の期限内申告書にこの特例制度の適用を受けようとする旨の記載をするとともに、計算明細書等を納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
贈与により取得した金額が住宅取得資金の非課税枠以内のため贈与税額が発生しなくても、必ず贈与税の期限内申告が必要です。
特例によっては宥恕規定により期限後申告が容認される制度もありますが、本制度に設けられた宥恕規定は期限内申告書に当該非課税制度の適用を受ける記載がない場合又は添付書類がない場合に救済される宥恕規定であり、期限内申告書の提出がない場合に救済される宥恕規定ではありませんので、注意が必要です。
④住宅取得資金の贈与であること
住宅取得資金の贈与税非課税制度は、住宅用家屋の取得等に充てるための金銭の贈与が対象です。
従って、既に所有している住宅用家屋に係る住宅ローン返済のための資金の贈与や住宅用家屋そのものの贈与は対象になりません。
⑤同族会社から居住用不動産を取得した場合
住宅の取得先は受贈者の配偶者や受贈者と特別の関係がある者(受贈者の生計を一にする親族等)は除かれていますが、政令で限定列挙されている相手は個人に限定されており、法人は除かれていますので、同族会社からの取得は可能と思われます。
⑥受贈者の所得要件
住宅取得資金の贈与税非課税制度の適用を受けられる受贈者の所得要件に合計所得金額が2,000万円以内という所得制限がありますので、受贈者の所得には注意が必要です。
給与所得のみの場合は所得の予測が容易ですが、事業所得等予測が難しい受贈者は特に注意が必要です。
⑦相続開始前3年以内の贈与財産の相続財産への加算制度に関する取扱い
住宅取得資金の贈与税非課税制度の適用を受けた贈与税の非課税部分は、相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産に加算する制度の対象になりません。
例えば、住宅取得資金の贈与資金として2,000万円の贈与を受け、贈与税の期限内申告により1,500万円が贈与税の非課税となった場合で、贈与から3年以内に贈与者が死亡したとしても500万円のみが相続税の課税対象となります。
なお、住宅取得資金の贈与をした同一年に贈与者が死亡した場合、受贈者は贈与税の期限内申告をすることで、贈与税の非課税とされた金額は相続税の課税対象財産から除かれます。

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