2020.09.10
相続税の延納
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相続税
相続税の納税
①相続税の延納(概要)
相続税は金銭一時納付が原則ですが、金銭一時納付での納付がどうしても困難な場合には延納による納付も可能です。
延納による納付が認められる要件は以下の通りです。
1.相続税の期限内申告、期限後申告、修正申告書の提出又は更正若しくは決定により納付すべき税額が10万円を超えていること。
2.1.の納付期限内に金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること。
3.延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保の提供は不要です。
4.相続税の納期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して所轄税務署に提出すること。
②担保提供財産
担保提供できる財産としては、国債及び地方債、社債、土地建物等となっていますが、担保提供不適格財産もあります。
例えば法令上担保権の設定や処分が禁止されているもの、違法建築物件、所有権に争いのある物件、共有財産の持分のうち共有者全員が持分提供に同意していないもの、担保価値が国税の附帯税を含む全額を保全していないもの等は担保提供財産として許可されません。
なお、担保提供財産は相続財産に限らず自己の固有財産でも構いません。
③延納許可限度額
延納が許可される限度額は納付すべき相続税額から納期限までに納付することができる金額を控除して計算されますが、金銭納付を困難とする理由書を利用して計算します。
納期限までに納付することができる金額の具体的な計算方法は、以下の計算で行います。
1.相続した現預金等(相続した現預金+相続財産のうち換価が容易な財産-相続債務・葬式費用)
2.申請者固有の現預金
3.当面の生活費(3か月分)
※当面の生活費は、税金や社会保険料、一か月100,000円の申請者本人の生活費、配偶者その他の親族は一か月一人当たり45,000円の生活費、その他教育費等を考慮の上計算され、そのうちの3ヶ月相当額が認められます。
4.1+2-3=納期限までに納付することができる金額
④延納の利子税
延納には利子税が課されますが、不動産等の割合により利子税の税率も延納期間も異なります。
延納を申請すべきかどうかは、納税資金を金融機関等から借り入れた場合の負担額との比較等から検討することとなります。
利子税の税率や延納期間は非常に細かく規定されていますので、稿を改めて解説いたします。
⑤延納の申請状況
相続税の延納は、令和元年は1,122件申請され、757件が許可、324件が取り下げ等、却下が51件されています。その他421件が処理未済となっております。取り下げはとりあえず延納申請をしておき、不動産の売却等で納税の目途がたったため、延納申請を取り下げたこと等が考えられます。
⑥延納の審査期間
延納を申請してから許可又は却下の処分がなされるまでの期間は通常は3ヶ月ですが、3ヶ月での審査が難しければ6ヶ月まで延長されます。