2019.04.03
相次相続控除
category
相続税
相続税の計算

①相次相続控除
相次相続控除とは、読んで字のごとく、相次いで相続が発生し、短期間の間に何度も相続税を納付することとなる場合に、その負担を緩和する相続税の税額控除制度です。
具体的には、今回の相続開始前10年以内に発生した相続により今回の被相続人が相続により財産を取得し相続税を納付していた場合に、今回の被相続人から相続又は遺贈、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与により財産を取得した者の相続税額から一定の金額を算出相続税額から控除します。
計算式は多少複雑ですが、
(1)前回納付した相続税に、前回の相続に係る相続税納付後手残り額に対する今回の相続に係る純資産総額の増減率を乗じ、
(2)さらに、相次相続控除を適用する者の純資産額の今回の相続に係る被相続人の純資産総額に占める割合を乗じ、
(3)最後に(10-前の相続から今回の相続までの年数)/10を乗じて計算します。
②適用が受けられる者
相次相続控除は次の要件を満たす者が適用を受けられます。
(1)相続人であること
この制度を受けられる者は相続人に限定されていますので、相続を放棄した者や相続人以外が遺贈により財産を取得したり、生命保険金を取得し相続税の納税義務者となった場合でも適用は受けられません。
(2)今回の相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること。
(3)今回の相続の開始前10年位内に開始した相続により被相続人が取得した財産につき、被相続人に相続税が課されていること。
③相次相続控除の適用を受ける場合の留意点
相続税の計算を行う過程において、被相続人が10年以内に相続税を納付していることが判明した場合は、納税義務者は相続を放棄せず、相続により財産を取得する必要があります。
また、配偶者が相次相続控除の適用を受けるほど財産を相続する場合は、法定相続割合を超えて財産を相続する必要があります。
配偶者が法定相続割合しか相続しない場合は、配偶者税額軽減の規定により、そもそも相続税が発生しないため、相次相続控除の控除不足が生じます。
従って、配偶者が相次相続控除を適用する場合は、相続割合にも注意が必要です。
④相次相続控除の適用状況
実務上、相次相続控除の適用はあまり見られません。
というのも、10年以内の相続発生に限ると通常は夫婦間の相続が多いのですが、夫婦間の相続の場合は法定相続割合又は1億6,000万円までは相続税の納付が生じませんので、夫婦間では相次相続控除の適用が考えにくいためです。
となると、親子間で10年以内に相続が続く場合に相次相続控除の適用が可能性としては考えられます。ただ、その場合でも10年前は旧税率の適用時期で課税対象者が今よりも少ない時代ですので、さらに適用可能性が低くなっているのが現状です。